わらの犬 (1971) : Straw Dogs

暴力が横行する現代アメリカから平和を求めてイギリスの片田舎に妻とともに逃れてきた若い数学者がたどる宿命を描く。原題のSTRAW DOGS(わらの犬たち)は、中国の思想家老子の語録の中からとった言葉で、超人間的存在である天から見れば、人間の行動は護身のために焼くわらの犬のようにちっぽけな存在にすぎないという意味である。製作はダニエル・メルニック、監督はサム・ペキンパー、ゴードン・M・ウィリアムスのベストセラー小説を、ペキンパーとデビッド・Z・グッドマンが脚色した。撮影はジョン・コキロン、音楽はジェリー・フィールディング、編集はポール・デイビス、ロジャー・スポティスウッド、トニー・ローソンが各々担当。

2011年にロッド・ルーリー監督、ジェームズ・マースデン、ケイト・ボスワース主演でリメイクされている。

監督:サム・ペキンパー
出演:ダスティン・ホフマン、スーザン・ジョージ、ピーター・ヴォーン、T・P・マッケンナ

わらの犬 (1971)のストーリー

現代。アメリカの若い宇宙数学者デイヴィッド(ダスティン・ホフマン)は、自らの平和主義の信念に従い、暴力に満ちたアメリカの現体制に反発し、エミー(スーザン・ジョージ)と共にイギリスに渡った。コーンウォール州の片田舎にある農家に住み、何ものにも煩わされることなく数学の研究に専念し、書物にしようと考えていた。エミーはコーンウォール出身で、この村に移ってくるとたちまち村の若者の眼をひいた。デイヴィッド夫妻は農家に落ち着くと、早速職人たちを雇って納屋の修理をさせることにした。ところが、その中に、エミーがデイヴィッドと結婚する前に肉体関係のあったベナー(デル・ヘナー)がいたのだ。ある日、デイヴィッドが村の若者たちにすすめられ、彼らがあらかじめ用意しておいた狩場へ鳥を撃ちに出かけた留守中に、彼を誘いだす計画をたてたベナーとスカットがエミーに暴行した。

数日後、村の教会で村人たちの懇親会が開かれ、デイヴィッド夫妻もそれに出席した。懇親会はなごやかな雰囲気の中で行なわれたが、エミーは楽しめなかった。彼女の記憶の中に、ベナーたちに犯された時の恐怖と苦痛、それらの感情と矛盾した歓びに似た感情が交錯していたのだ。だがデイヴィッド夫妻の運命を狂わせる事件は、そのなごやかな雰囲気の懇親会が発端だった。懇親会に出席していた精神薄弱者のジョン・ナイルス(ピーター・アーン)が村の行動的な娘エマに誘い出され、納屋に入った。エマの兄ボビーは、エマがジョンと行方をくらましたことを父親トム・ヘッドン(ピーター・ヴォーン)に告げるとトムは怒り狂い、次男のバーティーも呼んで、2人を探しにでかけた。一方納屋の中で隠れていたジョンは、彼女をヘッドン一家が探しにきた気配を感じ急にあわてだした。エマは思わず悲鳴をあげた。狼狽したジョンは両手で彼女の口をふさごうとしたが、遂に首を絞め死に至らしめた。ジョンは自分の過失の重大さに気づき、濃霧の中を道路に飛びだした。一方、デイヴィッドとエミーは懇親会の帰途、車が村端に差し掛かると、突然ヘッドライトの中にジョンが飛び込んできた。デイヴィッドは驚いて車を止めたが間に合わなかった。ジョンは車にはねられ傷を負った。デイヴィッドはジョンを家に連れて帰り傷の手当てをした後、村の酒場に連絡し医師をよこすよう依頼した。ちょうどその酒場には、ジョンを探し回っていたヘッドン一家がいたため、彼らは直ちにデビッドの家に押しかけ、ジョンの引き渡しを要求してきた。だがデイヴィッドはこれを聞き入れようとはしなかった。彼を渡せば、なぶり殺しにされてしまうことが火を見るより明らかだからだ。彼は戦う決心をした。数時間の死闘がくりひろげられた。デイヴィッドの頭脳的な作戦の前に一家は破滅した。

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